導入事例15
大久保歯科 様
スモールスタートで始めるDX
Dental eNote、メモの共有から
業務改革の切り札に
〜災害大国日本で医療の継続を支えるクラウドの安心感〜
- 医院名
- 大久保歯科様
- 院長
- 大久保 宏彌氏
PROBLEM課題
01
カルテの厚みが増していく
02
カルテを紛失してしまう恐れがある
03
管理するスタッフの負担が大きくなる
RESULTS導入結果
01
紙カルテからデジタルへ、紙からの解放
02
データがクラウドにある安心感
03
診療時間の短縮(働き方改革)を実現
BACKGROUND導入背景
宮城県仙台市北部、緑豊かな泉ニュータウンで開業して10年目を迎える大久保歯科は、診療チェア6台、カウンセリング室1、医師3名、スタッフ11名からなる、中規模の総合歯科医院です。高い天井の室内には、ステンドグラスを通した美しい光が降り注ぎ、アンティークの椅子が目を惹く明るい室内は、ここが歯科医院であることを忘れてしまうような優しい雰囲気に満ちています。大久保歯科のDXへの取り組みについて、院長の大久保 宏彌氏、歯科助手の狩野 志帆氏にお話を伺います。
「DXを検討し始めた頃は、東京や大阪のセミナーの情報交換の場では感度の高い先生方がDXのことをかなり話していたが、この辺りではまだそこまで情報が入っていなかったか、知ってるけどやっていないという状況だった。その頃院内のカルテは4000ほどになり、長く通ってくださる患者さんのカルテは厚さを増していた。紙のカルテは紛失の恐れもあり、このままでは管理するスタッフの負担が大きくなってしまうと感じていた。誰もやっていないことをやりたいと思うタイプなので、副院長(妻)に相談すると、同じく効率化に強く共感してくれたこともあり、DXの必要性を確信した」
「ある時(全く違う業界の人が)使っているアプリが目に止まり、聞くと「GEMBA Note
(*)ですよ」と。これ、歯科で使えるんじゃないかなと「GEMBA Note 歯科」で検索したら、これめちゃくちゃいいじゃん!と思ったのが「Dental eNote」との出会いだった。私は情報の多くを同世代または少し上の先生方から得ることが多いが、中でも実際に使っている人の意見は貴重だ。名古屋の歯科に勤めている同期がDental eNoteを使っており、『本当に使いやすい、書きやすい、直感的』と聞いたことがやはり一番大きく、Dental eNoteで行こう、と考えた」(大久保院長)
(*)GEMBA Noteは、MetaMoJi製デジタルノートアプリ。GEMBA Noteをサブカルテシステムとして利用する歯科医院も多く存在しました。それを受け、歯科医院用にメニューやテンプレートを構成したものがDental eNoteです。
HOW TO USE利用方法
― 導入時を振り返って
Dental eNoteは、診療記録のデータ管理だけを入れ替えられ、
他に影響しない
歯科衛生士チーフ、歯科助手(後出の狩野氏)、受付、院長の4人がメンバーとなり、まずはツールの選定を行いました。「他のツールも候補に挙がっていたが、レセコンや予約システムなどいろんなものを変えないといけなかった。既存の予約システムを組み直す必要があり、投資が大きくなってしまう。Dental eNoteはiPadだけでデータ管理だけを入れ替えることができ、導入しやすいと考えた」(院長)
デジタル化の最大かつ唯一の障壁は既存カルテのスキャン
方針が決まり、既存のカルテを資料を含んで全て取り込むことに決めたが、この負担についてスタッフの理解を得ることが一番大変だったと言う。「私は、一気にやらなくても毎日少しずつ仕事の合間にやっていけばいいと考えていた。しかし毎日60-70人の患者さんが来院する中で、合間にはできないとスタッフの抵抗が強かった。できない理由を話してくれても、私はできると思うーー現場と私の意識のズレがあったことがわかった。そして実際始めてみると仕事をしながらスキャンしていくのは大変なことだったし、部分的に取り込みに抜けがあるのは不便だった。私は『今後来るDX時代に、今から準備したほうが絶対にいい』とスタッフに言い続けた。そう言い続けることを面倒くさがったらDX化はできなかっただろうと思うし、この時お互いに正直に伝え合ったことで、スタッフと意識が共有でき、一気に進めてくれた」
そうこうするうちに「途中から狩野がDental eNoteを触っている時間が長くなった。これやってみようかと言うと、いろんなものを自分なりのアイディアでパーツを組んでくれるようになり、やり切ろうとしてくれる時間が長くなる様子を見て、これは責任を持って遂行する力があるなと思った。任せたと言うよりも、勝手に育ってくれた。狩野がメンバーになって動いてくれたことが一番大きかったし、このメンバーたちがいなければ実現していないと思う」と院長は当時を振り返った。
歯科助手の狩野氏は、院内DX推進のメンバーとしてアプリの選出からプロジェクトに関わりました。
「Dental eNoteはテンプレートを自由に作れたり、中でのスタンプなどを自分で作ることができる点がいいなと感じた。自由度が高く機能も充実していたので、予約システムとの連携がなくても、十分導入のメリットがあると感じた」
DXはステップ・バイ・ステップで
「実は、メモのような使い方しかしていなかった期間が1年近く続いた。最初は、Dental eNoteをメモを共有するアプリだと思っていて、いままで紙でやっていて "バリエーションは3色ボールペン程度"と同じようなイメージだった。それがオンラインで見られるようになるとしか認識できていなかった。」と狩野氏は言います。
しかし、この小さなステップでも、実はたくさんのメリットが生まれました。
- ・診療記録はいくら増えても分厚さとは無縁に
- ・出し入れはiPadから
- ・紛失の心配無用に
- ・その日に診察予定の患者さんのカルテをDental eNoteで開いておけば、治療と治療の間もスムーズにつながり、隙間時間に治療計画書を確認することも可能
- ・リアルタイム共有で常に最新の情報が確認でき、カルテへの書き足しも手元のiPadですぐにできる
そして最大のメリットは、「それまではサブカルテは患者さん別に物理的なクリアファイルに収めていたので、そのものを取り出して見に行かないと情報を把握できなかったが、今は一人一台iPadを持っていてDental eNoteでいつでもどこでもスマートに情報を確認することができるので、患者さんを待たせる時間が短くなった」ことです。
― 院内のDXは、どのように進んでいったのでしょうか
①メモのように使う
「使っているうちに画面上で写真を入れたり、音声をリンクで貼れたりできるんだなとわかってきた。
さらに、他院から譲ってもらったスタンプを参考にカスタマイズして、ツールボックスを使うことにした。
使い始める時にスタッフ向けに説明会を開いた際、反対はなかったがその場では「何だこれ?」という感じで、後で個人的に質問され、その質問に繰り返し答えるうちにみんな使えるようになった」
②写真を入れる・スタンプ(ツールボックス)を使う
◉治療計画書(左)レントゲン写真・口腔内写真を簡単に貼り付け(中/右)入力はリストから選ぶだけ
「他院から譲ってもらったテンプレートを分解して、貼り付けて組み合わせて、選択肢を変えてみたり、組み立て直してみたりしているうちに、これはツールを組み合わせたら時短になるということがわかった。初めてiPhoneを持った時と同じような感覚。時間が経ってすごいものだと思った。これはできるかもと楽しくなってきた」と言う狩野氏が作成したテンプレートを見てみましょう。
③テンプレートをカスタマイズして使う
◉次回予約表テンプレート
(左/中)必要な分だけ次の欄を増やしていく作りになっており、複数の項目がひとつにまとめてツールボックスに登録されていて一度に貼り付けられる。
(右)当日の治療内容や、予約に必要な項目は選択肢からタップするだけで記入できる
手書きだと記入に時間がかかりますが、項目・選択肢が予め設定されているので、書き漏れ・ムラなし。受付との連携も正しく伝わります。
テンプレート化を進めたことで、治療後、患者さんを待たせる時間を減らすことができました。
様々な場面での業務効率が上がり生み出した「小さな時短」の積み重ねで、働き方改革のひとつとして、昼休みを90分から60分に、19時までだった診察時間を18時までに短縮することもできました。
唯一19時まで診療を行う木曜日と、平日は来院が難しい患者さんが集中する土曜日は混雑しますが、それでも残業はほぼ発生しないと言います。
院長は「Dental eNoteは、与えられたものをそのまま使うだけであればそんなに難しくない。私たちも長らくデジタルのメモ帳のようにしか使えていなかったが、それでも紙カルテのデジタル化の効果はあった。
もしDental eNoteがなかったら、予約システムからごっそり入れ替えるようなDXには取り組んでいなかったと思う。
しかし、それで終わっては、Dental eNoteのパフォーマンスを最大限に発揮することが全くできない」そう感じていた院長は、「メモ帳のようにしか使えていなかった」というその間も、積極的にセミナーや勉強会で情報を入手し、様々な活用の実例に関する情報を院内にフィードバックし、院内DXをリードし続けました。
それを受けた狩野氏は "院内でどう使うか" を粘り強く考え、手を動かし続け「昨年10月頃に、カスタマイズしてオリジナルの使い方をする今の形になった」のです。
「今の状況には大変満足している。しかしここに到達するには、狩野のような意欲的な人がいないとちょっと厳しいかなという感じはする。自分でカスタマイズしようと頑張ってみたが、難しかった」と言う院長ですが、Dental eNoteと他のアプリを組み合わせた活用を始めています。
「もう少し書く時間を減らせるかなと思い、コンサル中にAI録音ツールをつけた録音を試している。コンサル中は書かずに、患者の意見を聞いて会話をすることに重きをおく。録音は文字起こしされPDFでDental eNoteに貼り付けておくことができるし、要約もしてくれる。全部読み直さなくてよいので負担が減り、スタッフもストレスなく使っている。頭がDX脳になってきたかな」と言います。
「現在、満足度は100%だが、Dental eNoteならもっとやれることがあるのでないかなと感じるところがあるので、できること的には50%くらいだと思っている。現場には ”ここを直せば2時間の作業がなくなる” ということがたくさんある。(それを解決できるような情報提供や支援を)MetaMoJiには本当に頑張ってほしい」と、院長はDental eNoteをベースに今後さらに業務改革を進めようとしています。
「今から紙ベースのものには本当に戻れないし、戻りたくもない。Dental eNote導入後、以前はインカムを使っていたものはほとんどDental eNoteに記録するようになった。これは、できるだけ記録に残る媒体を使いたいと考えるからだ。日本は災害が多い国なので、いつ何時、ここが壊れてしまったりということはある。カルテという本体はなくなっても、患者情報はここ(Dental eNote=クラウド)にあるので、もし何らかの形でここでやれない時が来ても、どこでも再建できる。これは強みだ。「紙のカルテが流されたから患者情報が何もない」では大変。クラウドにデータがある安心感は、そういう時に力を発揮するのではないかと思っている」(院長)と、医療の継続性も重要視しています。
患者さんのデータがクラウドにあるという安心感
FUTURE今後の展開
今後のITの活用について、狩野氏は「ネット予約はできるが、調整の自由度が低くて『ここから先はお電話でお問い合わせください』になってしまう。AIを使って『ここが空いてますよ』みたいなことができればいい」と言います。
そして院長は「治療が終わったらそのまま帰れるようにするところまでやりたい。超えないといけない障壁はたくさんあると思うが、患者さんも私たちも、お互いの時間を有効に使おうよ、という思いがあるので、もっとシームレスな診療スタイルにしていきたい」と言います。
大久保歯科は、院長・副院長夫妻が二人で開業した歯科医院です。「この街並みが好きで、このあたりで開業したい」と言葉にし続けていたら、ある時、元アンティークショップのオーナーから「ここでやってみない?」と声がかかり、外観も内装もイメージとマッチしたこの建物での開業に至ったそうです。「地域に、心から貢献したい。歯科には治療するだけというイメージがまだまだあるが、予防医療をもっと地域に認知してもらい、私たちの治療で人生を豊かなものにしてもらいたい。そのためにスタッフにも同じ気持ちで取り組んでもらいたい」と言う院長は「開業から10年、あっという間だった。これまで無理やり走り切ってきたこともあるので、次の10年は、自分も含めて一人一人がイキイキと楽しくできる環境を作りたい。クリニックで、自分にしかできない・しかも楽しくできることを見つけて欲しい。経営者としてはそれを伸ばす10年にしたい」と言います。
言葉にし続けることで、いつかそれは実現する。「いつかくるDX時代に備えて、今やりたいんだ」と言い続けたことが、今こうして実現し、院内スタッフや患者さんの笑顔につながっています。

MetaMoJiは、Dental eNoteをはじめとする製品群で、大久保歯科様をはじめとする歯科医院の進化を支えてまいります。(2025年7月取材)