導入事例12
やまもと
ファミリー歯科医院様
食べることは、
人間らしく生きること
寄り添う歯科医院で
あり続けるために
訪問診療特有の問題点を
Dental eNoteで解決

- 医院名
- やまもとファミリー歯科医院様
- 院長
- 山本 貴信氏
PROBLEM課題
01
往診時に持ち出すカルテや複写書式など荷物が多く移動が大変だった
02
往診途中に予定外の急患が入るとカルテを取りに戻る必要があった
03
カルテ出しが大変で、受付は足元までカルテだらけだった
RESULTS導入結果
01
カルテはタブレットの中。ページが増えても人数が増えても重さは変わらず、複写様式の準備や持ち出しも不要になり手荷物が激減。狭い階段でも楽に移動できるようになった
02
急患のカルテを取りに戻る必要がなくなり、移動時間を削減し、対応できる患者が増えた
03
Dental eNote化しカルテの出し入れが不要になり、追加書き込み時にもカルテを探したり戻したりする必要がなくなった
BACKGROUND導入背景
京都と大阪の県境に位置する八幡市の「やまもとファミリー歯科」は、10台のチェア・30人のスタッフを有する規模の大きな歯科医院です。2005年の創立当時から「訪問診療」を「外来」に並ぶ柱に位置付けており、毎月230名ほどの訪問診療を実施していますが、予約は常にいっぱいでフル稼働です。

「訪問診療は、人の生き死にに近いところにある。入れ歯になって食べられなくなると人は一気に弱る。ピッタリ合う入れ歯でしっかり食べられれば良いが、合わなくなると調整が必要だ。過去に調子が良かった頃の状況に近づくよう、ブリッジ、麻酔など、訪問でもあらゆる治療をしてできる限り義歯にせず、義歯なら納得するまで調整し、ごはんが食べられるようにして人間らしく生きてもらいたい。自分で食べられなくなって痩せていた患者さんが『入れ歯のおかげで体重が増えて良くなりました』といったことが聞けるのはこの上ない喜びだ。外来は、来て満足した人だけが満足し、満足しない患者は離れて終わりだが、患者さんが寝起きする場所に一歩踏み込みグッと近い関係になり、相手が納得するまでずっと寄り添うのが訪問診療。私はしつこいので、この<終わらないでいい>関係が性に合っている」と言う山本院長。しかしいくら時間がかかっても良いと言うものではなく「入れ歯が合わない痛みは2回目までに解決しないと、それ以上同じ手技では成功しない。自身も50歳を過ぎて治療は成熟してきたが、30-40代の時のような頑張りには敵わなくなってきているので、やまもとファミリー歯科の看板を背負って訪問診療を担えるスタッフを育成したい。みんなあと一歩頑張ればできる優秀なスタッフだと感じている」と言います。

歯科医療は、外来における歯科医療が主体となっており、通院ができなくなる時点で高齢者の受療機会は失われている可能性が高くなっています。介護が必要となった高齢者の調査では、歯科医療や口腔健康管理が必要である高齢者は64.3%存在するのに対し、実際に歯科医療につながっている割合は2.4%にとどまっているという調査結果もあり、需要と提供体制に乖離があることが課題になっています。(*参考:「2040年を見据えた歯科ビジョンー令和における歯科医療の姿ー」(2020年10月 公益社団法人
日本歯科医師会))
医療を必要とする患者の多さに対して圧倒的に不足している訪問診療。その現場が抱える課題(困りごと)をDental
eNoteでどのように解決しているか、お話を伺います。
HOW TO USE利用方法
訪問診療グループは、休診日を除き毎日、医師と衛生士がペアとなって2台または3台の往診車で出動して毎月約230名の往診に対応します。コーディネーター(外来の受付に該当)が院内からサポートします。患者さんは月1回から4回まで頻度が異なり予約は常にいっぱいで、往診スタッフはフル稼働状態です。訪問診療は原則予約制ですが、急患が発生すれば、コーディネーターが経路上に急患の対応が可能な車があるかどうかなどを調整します。以前は、急患発生時にはカルテを取りに戻るか、治療後戻ってから作成する必要がありました。

訪問診療:両手いっぱいの荷物で、1日何度も階段を昇り降り



(左)狭い階段を、たくさんの荷物を持って何度も上り下りする(中)訪問先の資料は、治療記録を遡って確認することもあるので一式すべて持っていく(右)それぞれのレントゲン写真や、カメラで撮影した写真なども含めると、雑誌ほどの分厚さになるものもある
往診時には、訪問先分のカルテと診療セットなど大量の荷物を持っていく必要があります。往診先は団地も多く、幅の狭い階段の昇り降りが大変でした。階段を登ってケアが終わると片付けをして階段を降り、またすぐ隣の階段を上がることが頻繁に発生し、高齢者施設にしても同じで、この部屋でケアが終わると次の部屋へ、大量の荷物を持って移動する必要があったと言います。
個人情報であるカルテを車に残して万が一のことがあってはという懸念もあり常に手元に持って移動するルールにしていたり、診療歴が長くなるにつれ厚さが雑誌のようになったカルテの束を持ち運ぶ必要もありました。

※画像をクリックすると拡大します。
また、カルテ以外にも持ち歩く紙類の多さに困っていました。訪問診療ならではの、介護保険用の定型様式、医療保険の定型様式、ケアマネ用の様式など、同じような内容なのに個別に複写を残す必要があり、様式に医院名や日付を記入する作業も含めた事前準備にも多くの時間を取られていました。
この状況を何とかしなければと、院内の事務全般を管理する院長夫人(事務長)が見つけ出したのが「MetaMoJi Dental eNote」でした。すでにレセコンは使い慣れたものがあったので診療ノートを扱うもののみを求めていたことと、予約システム搭載のメモアプリもありましたが、手書きで使用できる・往診先からタブレットで使用できることなどからDental eNoteに決めました。

Dental eNoteでカルテ出し時間・写真処理時間から解放
「訪問診療だけに絞れば、私ひとりでも2ヶ月あれば全ての診療ノートをeNote化することができたので、往診から始めたのは正解だった」と事務長は振り返ります。「診療ノートはタブレット1台で済むようになって紙の荷物が激減した。急患対応時にカルテを取りに帰るためだけに移動する必要がなくなり、ひとりでも多くの患者さんに対応できるようになった」「院内と現場がリアルタイムに連携できるのがとにかく便利」とコーディネーターも太鼓判を押します。
「導入当初は想定していなかったが、写真の扱いが楽になったのも大きなメリットだった。以前は写真を撮って帰り、USBでパソコンに取り込み、専用のアプリで加工や印刷をしてカルテに挟み込むまで、院内に帰ってからの作業に時間を取られていたが、今はタブレットで写真を撮るだけ。そのまま診療ノートや必要な様式に貼り付けることができる。歯科治療において写真を使用する場面は多いので、非常に効率が良くなった」と言います。

※画像をクリックすると拡大します。
見つけた問題点はすぐに改善しました。「スマホのテザリングで運用するつもりだったが、診療のスピードを確保するため、すぐにWi-Fiモデルからセルラータイプに変更した。この時の経緯を元に、院外からの使用はデータもできる限り軽い方が良いと考え、院内で利用する外来のサブカルテと、院外から利用する往診のサブカルテは分けて運用することを決めた」と言います。
スタッフの声
- 1日約100人分のカルテの出し入れにかかる時間が大幅削減。以前足元までカルテだらけだった受付がスッキリし、カルテ出しのために残業することもなくなった
- 書き間違えをした時に、紙だと修正テープで汚くなったりしたが、書いた文字を移動できて便利
- 後で書こうと思っていたことがサブカルテが戻るのを待たなくてもすぐにできるところがいい
- オーラルフレイル、発達不全症など、それぞれの様式があってサブカルテはすぐに分厚くなってしまうので、以前は紙を増やさないように小さくまとめて書くようにしていたが、より丁寧に書き残せるようになった。欄外に書けるのも便利
- 写真の扱いが楽!染め出しをした時に写真をすぐに貼り付けられたり、噛み合わせ動画を貼り付けて治療の前後で患者さん自身が確認できたり。貼り付けた写真の上にも書けるのがいい
- アルコール綿でサッと消毒できるので、紙に比べて衛生面も◎
外来にも拡大:足元までカルテだらけ
だった受付が激変
訪問でのDental eNoteを導入後ネガティブな要素が見つからなかったこともあり、外来への使用拡大は自然の流れでした。導入前は「難しそう」と感じていましたが、スマホを使い慣れた若い世代も多く、あっという間に浸透。現在は10台のチェアに各1台、受付には3台を配置して運用しています。外来のサブカルテのeNote化は全体の半分くらいまで進んでおり、今はまだ紙カルテと混在していますが、今後eNote化率に合わせてiPadを増やしていく予定にしています。
FUTURE今後の展開
命の綱を握り続けていく覚悟こそ、
やまもとファミリー歯科イズム
この地で先陣を切って訪問診療を始めてから19年、Dental
eNoteで様々な作業効率が向上しても、訪問診療の予約は常にいっぱいだと言います。診療できる患者を増やすには、スタッフを増員しなくてはなりません。「対応できるスタッフの人数は決まっているし、女性一人で訪問させることの危険性の考慮が必要な場合もある。往診車は増やせばいいが、往診スタッフには高いスキルが求められるので、育成は簡単ではない。例えば外来は周囲にすぐに相談できるが、往診は違う。患者様の状況も、突然意識を失うなどのケースも発生するため「キッチリできる」のハードルを下げることはできないので、まずは外来で十分に理解した上で「やまもとファミリー歯科」の看板を背負って行ってもらえる信頼を院長が認めて初めて往診スタッフの一員になれる」(事務長)
「中には、往診に気楽なイメージを持って「訪問に行きたいです」と面接に来るような人もいるが、往診は想像を超えた環境の家庭もあり、外来の何倍も大変なもの。覚悟が必要。」と訪問診療の厳しさを強調します。そんなに厳しいのに外来を希望したくならないか尋ねると、「それでもやりがいがある」「患者さんが『話ができて嬉しかった』と言ってくれると嬉しい」「往診帰りにドクターと『前回より元気でしたね、笑顔でしたね』と話すんです」とスタッフから次々に言葉が溢れます。「スタッフから『あの患者さんはピンクが好きだから、ピンクの歯ブラシにしよう』『外来に比べてケアの際に首が辛そうだから、ネックピローを試してみたらどうか』などの提案も多いですし、『来週もまた会えますように』と心から願い、『自分が行かないと、この人は誤嚥性肺炎を起こして亡くなってしまうかもしれない。そんなケースをできる限り減らしたい』と、スタッフひとりひとりが"患者さんの命の綱"をずっと握っていくんだと覚悟しているように感じられる場面が常に見受けられる」と言います。冒頭の院長の話とリンクする感覚、これこそが「やまもとファミリー歯科イズム」です。
「往診を待つたくさんの患者さんがいるし、今後も確実に高齢化は進みニーズは増すばかりだ。訪問診療は、治療が進んで歯の掃除まで到達すればあとは衛生士が定期的にメンテナンスを続けていく仕組みが出来上がる。しかしそこに至るには「そこまできっちり持って行ける」という信用が要る。逃げなければ必ずできるのだが『死ぬまで好きなものを食べさせてあげたい』と思って歯科医師を目指したはずなのに(訪問診療は)『やめておこう』という結論を出す医院が非常に多い。訪問診療は逃げられないからだ。しかし、覚悟して逃げずに続けていれば必ず成功する。訪問は「逃げない心」だ。患者の声を聞き、応える努力を続けることだ」
「院長は患者さんに『次はここを触りますよ』『次はこうですよ』と何度も声をかける。優しい声がけで患者さんは院長の声を聞けば聞くほどリラックスする。しかしスタッフを見極める目はとても厳しい。自分にできることはあなたもできるでしょうと思っているから、時には合わないこともある」(事務長)と後任育成の難しさを口にすると、院長は「歯科医師免許というのは、歯を診られる資格であって、訪問診療ができる免許ではない。訪問専門の免許を出してもいいと考えているくらい特殊なもの。医者というのは、自分が「ここまででOK」と決められると思っていることが多いのも事実だ。しかし、本来「これでOK」は患者さんが決めるもの。患者さんの声を聞いたケアマネさんや業者さんが「あそこの訪問はいいよ」という信頼でつながっていく。だから私は「これで訪問を任せてもOK」のハードルは下げられない」と返します。
「最後までごはんが食べられる人間らしい生き方」を支える命の綱を握り続けることから逃げずに、開業から19年ずっと訪問診療を続けてきた山本院長は、これからも「看板を背負わせて任せられる」人材の育成から逃げたり、質を諦めたりすることはないでしょう。「いろんな患者さんがおられ、暴れることや、ひどく怒るようなこともある。でも私は、患者さんが怒っても全く腹が立たない。そして何より歯医者が苦手。だから、こうしてくれたらいいのにな、という患者さんの気持ちがよくわかる。できる限り痛くないように、怖くないようにという気持ちが強いかもしれない」と笑う優しい言葉の奥に、これからもずっと地域医療の一端を担い、命の綱を握り続けていくのだ、という熱い覚悟を感じました。



(2024年12月取材)